理事長より・講演情報

子どもや若者に寄り添い、子どもや若者が地域で安心して暮らすことができる社会の実現を目指し、活動しています。

ご挨拶

 新型コロナウィルスの緊急事態宣言発令の中で開始された2020年度は、協会の存在意義を問い直すよい機会となりました。活動の中心のひとつである養育支援訪問事業や産前・産後訪問支援事業はコロナ禍の家庭の子どもたちにとって児童虐待の最後のセーフティーネットとなる事業であり、重要な事業であることを再認識しています。さらに、不登校・ひきこもりや少年事件の当事者もそれぞれ弱者として家庭の中で厳しい日々を送っており、それぞれの事業にも力を入れて行きたいと考えています。
 4月に一律10万円の特別定額給付金が突然、まとめて世帯主に給付されると発表されました。直後にDVから逃げている母子への救済方法は対応が発表されましたが、児童養護施設で生活している子ども、児童虐待で親から逃げている子どもや児相の一時保護所で現在生活している子どもはその網の目から抜け落ちていますので、4月半ばにメディアに早急の対処を訴えたところ、東京新聞が取り上げてくれました。協会のコラム「東京新聞5月2日夕刊記事」〜子どもの給付先は子どもにというコンセンサス〜をご一読いただけたら嬉しいです。このままでは児相の一時保護所で生活している子どもの給付金が世帯主に届いてしまうと危惧していましたら、遅まきながら5月20日に厚生労働省から都道府県児童相談所宛て通達で、希望の子どもには職員の確認書付で子どもへ給付するという苦肉の策がとられました。厚生労働省は本気で乳幼児や小学生が給付金のことを理解して自ら希望を表明出来ると考えているのでしょうか。今回の給付先騒動で、世帯主が一括して受け取るシステムは既に破綻していることがようやく認知されたのではないかと思います。
 弱者へのしわ寄せとしては、ひとり親世帯の生活が直撃を受けています。各自治体にある子ども家庭支援センターの養育支援訪問事業は、今こそ出番ではないかと私は考えています。特に母子家庭の貧困化は急激に進んでいます。母子・父子家庭だけでなく親と子どもが狭い家庭の中で顔を突き合わせていれば、父母同居の家庭においても気持ちが不安定になって一歩間違えれば児童虐待やDVに発展する危険性を孕んでいます。子どもと生活を共にしている親に対しては誰でも子ども家庭支援センターの窓口が親身に相談にのってくれる機関であることをもっと各メディアは広報をしていただけたらと願っています。子どものいる家庭の貧困の相談については、経済的な逼迫が虐待やDVに直結してしまいますので、さまざまな具体的な支援が取り揃えてある子ども家庭支援センターの窓口に先ずは相談に訪れ、場合によっては生活保護課に繋いでもらうという順序がとられるといいのかなと思っています。
 また、長期の休校と再開の中で、教育問題についてはさまざまな立場からの提言、意見、要望が出されています。弱者にしわ寄せが行きやすいことを考えますと、先ずは子どもからの現状の苦しさや今後への打開策、要望等さまざまな生の声に耳を傾けるところから出発してほしいと願っています。一口に子どもと言っても、多様な立場や年齢の子どもたちがいますので、一部の子どもの声だけで分かったつもりにならないでほしいと思います。不登校だった子どもがオンライン授業を受けたら、それを契機に通学を始めたという新聞記事が掲載された日の朝、中学で不登校だった通信高校1年生が拳銃自殺をはかりました。オンライン授業については、自宅に居ながら受講出来ますので不登校生徒の一部はほっとした気持ちで受講していると思います。でもそれは、あくまでも不登校生徒の一部であるということです。今までも自治体によってはさまざまな取り組みが実施され、出席扱い対応がとられています。オンライン授業になったら不登校が解決するわけではありません。不登校の問題を今の日本の長期休校問題や学校の入学時期を何月にするかという問題と一緒に論じること自体が間違っていますし、日本の教育制度そのものを根本から見直す時期に来ているのではないかと私は考えます。不登校やいじめが何故年々激増しているのかを考えてみますと、現在の日本の教育制度そのものが崩壊し始めているからだと思います。教育は一人ひとりの子どもが生きて行くうえでの子どもにとっての大切な日々の営みであり、一人ひとりがしあわせな生活を送ることの土台であると思います。原点から教育の在り方を考えて行くためには、さまざまな専門領域の研究者や諸外国の先例並びに現場の教員からだけでなく、どうか文部科学省では、現在或いは過去に不登校・ひきこもりだった経験者と、現在或いは過去にいじめの被害・加害の経験者から生の声を、そして彼らが要望するこれからの教育体制・学校のあり方への提言に真剣に耳を傾けていただきたいと思います。明治・大正・昭和と指示命令の一方通行授業の下で、資本主義を担う労働者育成が目的であった今までの教育から脱け出して、現在・未来に求められている社会のあり方と人間像を先ず明確化していくことが今、求められているのではないでしょうか。
 次に、この数年間、少年法の年齢を選挙権や民法に合わせて20歳から18歳に年齢を引き下げる法案の上程を自民党が強行しようとしています。少年法の年齢引下げについては、現場で18歳・19歳の少年の立ち直り支援を長らく続けている私としては年齢を引下げることについてはデメリットでしかありません。協会HPのコラム「少年法と若年受刑者処遇を考える」(2020年2月21日)「少年法18歳年齢引下げに反対」(2019年7月9日、4月15日)をご参照していただければと思います。今年2月の国会では公明党の反対で上程されませんでしたが、再び今年の秋の臨時国会に上程されるのではないかと危惧されています。少年法の年齢引下げ法案については現場サイドからの反対の声に加えて、元少年院院長有志や元調査官有志から、さらに5月には少年事件を担当してきた元裁判官有志までもが反対の声を上げています。少年事件は少年一個人によって引き起こされるわけではなく、背景には児童虐待やDV、地域環境や仲間関係、貧困等複雑な要因が複合的に絡まっていることと、精神的な安定等の情緒的発達は25歳頃まで掛かるという最近の脳科学の知見から、少年法の年齢を反対に引き上げた方がいいとの欧米の流れ(オランダは既に23歳まで引き上げている)もあります。元少年院院長有志、元家裁調査官有志、元裁判官有志がそれぞれの立場からこの法案に反対の声を上げたことはこのまま黙ってはいられないという彼らの危機意識から発した行為であり、どれだけ異例な事態であるかということを現政権と自民党議員には気がついてほしいです。少年法の年齢引下げには継続して反対して行きます。
 最後に、日本の児童虐待を減少させることを目的として、養育支援訪問事業の実態調査研究を実現したいと考えていますが、予算の問題でいまだ開始出来ておりません。今年はクラウドファンディング等も視野に入れつつ開始の糸口を見つけられたらと考えています。さらに今年度は、港区から委託を受けて不登校の高校生が穏やかで安定した日々を送れるように、親ごさん対象に3回の講演会と2回の親の会を企画しています。

2020年6月

特定非営利活動法人
日本子どもソーシャルワーク協会
理事長 寺出壽美子

理事長 講演情報

当協会の理事長は、皆様からのご依頼を受けての講演・研修活動も行っております。 講師のご依頼は「講師依頼」ボタンをクリックして表示される画面を印刷し、必要事項をご記入の上、当協会までご連絡ください。

理事長講演とは別に、協会ではさまざまな講座やシンポジウムなども開催しています。詳しくは、講座・シンポジウムをご覧ください。

理事長

理事長 寺出 壽美子
プロフィール

  • ソーシャルワーカー NPO法人日本子どもソーシャルワーク協会理事長
  • 日本子ども虐待防止学会会員
  • 東京都子供・若者支援協議会代表者会議委員
  • 世田谷区子ども・若者支援協議会代表者会議委員
  • 前東京都次世代育成支援行動計画懇談会委員
  • 前東邦大学薬学部非常勤講師
  • 前児童養護施設施設長
  • 元府中市と新宿区の子ども家庭支援センタースーパーバイザー

1970年、慶應義塾大学文学部社会心理教育学科卒業。
高校の教員、子どもの本屋店長、不登校児童も含めた学習塾代表等を歴任。
虐待、いじめ、不登校・ひきこもり、家庭内暴力、 薬物、少年事件、嗜癖、摂食障がいなど、多岐にわたる子どもとその親への面接相談や、支援に関わっている。不登校・ひきこもり等の子ども・若者への「ユースワーカー」派遣や子ども・親を支える「ケアワーカー」派遣、少年事件の少年への支援を担当。社会福祉士。

<共著>
「家庭訪問型子育て支援ハンドブック」(明石書店)
「養育事典」(明石書店)(2014年7月発売)
「いじめ、いま親にできること」(木馬書館)

<調査研究>
「ひとり親家庭ホームヘルプサービス事業に関する支援状況の調査報告書」(2006)