理事長より・講演情報

子どもや若者に寄り添い、子どもや若者が地域で安心して暮らすことができる社会の実現を目指し、活動しています。

ご挨拶

 2年目を迎えたコロナ禍の中、ワクチン接種が進むと共にオリンピックの開催について、さまざまな意見が取り交わされています。それにつけてもこの2年間、日本の政治の弱点がこれほどまでに露呈されたことはなかったのではないでしょうか。
 今年5月に18・19歳少年は特定少年として厳罰化を目指す少年法改正案が参議院で可決成立しました。この新たな少年法は18・19歳少年に対する厳罰化であるとともに、少年法の目的とそれに基づく少年への処遇の大幅な後退を示すものだと思います。少年事件自体が児童虐待・貧困等の社会構造を背景としているにも関わらず、事件を起こした当の少年自身の問題であるとしか理解できていない大人の問題であると考えています。
 また、このコロナ禍で顕著に見えてきているのは、不登校・ひきこもり、発達障がいの相談の増加です。不登校・ひきこもりに関しては、明治以降の教育制度が今の時代にあまりに合致しないが故の結果ですので、小手先の変更ではどうしようもないところにまで来ていると思われます。発達障がいに関しては、少なくとも子どもの現場に関わっている全ての人々が発達障がいを学んでおく必要がありますが、大人の発達障がいに範囲をひろげて考えてみますと、中学の保健教科において発達障がいの内容を必修にするくらいの大改訂が求められているのではないかと思います。人間理解の上で誰もが知っていましたら皆がもう少し生きやすくなるのではないでしょうか。
 今年度も昨年度に引き続き港区教育委員会から委託を受けて、不登校高校生の保護者向け講演会と保護者の交流会を年2回、実施する予定です。自治体にもよりますが、小学生・中学生の不登校に対しては保護者も含めて、さまざまな取組みや支援がなされています。また、18歳以降の若者から80−50問題の大人支援まで自治体は熱心に取組み始めるようになりました。けれども高校生の不登校だけは、ほとんどの地域で対応が遅れていますので、今後、各地の自治体が不登校の高校生に対しての支援を開始するように期待しています。
 またさまざまな制度の駆使により、渋谷区の生活保護課では生活保護費受給中で不登校やひきこもりの方々へのユースワーカー訪問が今年度から開始されました。生活保護中の子ども・若者の不登校・ひきこもりへの支援は、どこの地域でも後回しになりがちですが、さまざまな制度を駆使することで支援を拡張することができるいい前例になると思っています。
 最後に、児童虐待の心理的虐待を受けた子どもたちに対しては子ども家庭支援センターの養育支援訪問事業の育児・家事支援を通して子どもの精神的回復を進めていますが、この育児・家事支援の関わりによる子どもの安心・安定の回復は、単に子ども時代だけの問題ではなく成人後の人生にとってもどれだけ重要なことであるかを私はこの数年書き続けて来ました。ようやくこの3月に助成金を獲得して、4月から東京都の自治体の養育支援訪問事業の実態調査を開始することが出来ました。
 心理的虐待を受けた子どもの件数は1昨年全国で10万9千件(全児童虐待件数19万3千件の56.3%)に上ります。身体への虐待・ネグレクトの場合と異なり、心理的虐待を受けた多くの子どもはその後も親と共に生活を継続していくために虐待を受け続けることが多く、また心理的虐待を受けた子どもの傷は目に見えないために、虐待の傷から回復する前に支援が終了しているのが実情です。その結果、成人してからもギャンブル・お酒等さまざまな依存症を抱えながらでないと生きていけない方がたくさん出ています。しかしその依存症が親から受けた心理的虐待の後遺症として生じているという自覚は本人には無く、自分自身の性格の弱さ故にお酒やギャンブルに溺れているのだと思っています。各自治体の養育支援訪問事業の実態調査を通して、心理的虐待を被った子どもたちが精神的回復に至るにはどれくらいの時間を温もりの中で受けとめられる必要があるのかという道筋を明らかにしていけたらと考えています。
 来年3月に東京都自治体の調査研究報告書が完成しましたら、次は全国の自治体の養育支援訪問事業に調査を拡げ、さらに各地の支援事例調査を加えることで、訪問支援におけるガイドラインの構築まで展開出来たらと構想しています。
 協会の立ち上げから21年目を迎えました。コロナ禍でもあり、協会自体の運営も芳しくない状況ではありますが、さまざまな構想の実現に向けて日々努力を傾けております。どうぞ、今後ともご支援・ご協力を賜ることが出来ますように、よろしくお願い申し上げます。

2021年6月

特定非営利活動法人
日本子どもソーシャルワーク協会
理事長 寺出壽美子

理事長 講演情報

当協会の理事長は、皆様からのご依頼を受けての講演・研修活動も行っております。 講師のご依頼は「講師依頼」ボタンをクリックして表示される画面を印刷し、必要事項をご記入の上、当協会までご連絡ください。

理事長講演とは別に、協会ではさまざまな講座やシンポジウムなども開催しています。詳しくは、講座・シンポジウムをご覧ください。

理事長

理事長 寺出 壽美子
プロフィール

  • ソーシャルワーカー NPO法人日本子どもソーシャルワーク協会理事長
  • 日本子ども虐待防止学会会員
  • 東京都子供・若者支援協議会代表者会議委員
  • 世田谷区子ども・若者支援協議会代表者会議委員
  • 公益財団法人東京YWCA理事
  • 前東京都次世代育成支援行動計画懇談会委員
  • 前東邦大学薬学部非常勤講師
  • 前児童養護施設施設長
  • 元府中市と新宿区の子ども家庭支援センタースーパーバイザー

1970年、慶應義塾大学文学部社会心理教育学科卒業。
高校の教員、子どもの本屋店長、不登校児童も含めた学習塾代表等を歴任。
虐待、いじめ、不登校・ひきこもり、家庭内暴力、 薬物、少年事件、嗜癖、摂食障がいなど、多岐にわたる子どもとその親への面接相談や、支援に関わっている。不登校・ひきこもり等の子ども・若者への「ユースワーカー」派遣や子ども・親を支える「ケアワーカー」派遣、少年事件の少年への支援を担当。社会福祉士。

<共著>
「家庭訪問型子育て支援ハンドブック」(明石書店)
「養育事典」(明石書店)(2014年7月発売)
「いじめ、いま親にできること」(木馬書館)

<調査研究>
「ひとり親家庭ホームヘルプサービス事業に関する支援状況の調査報告書」(2006)