子ども・若者支援に思うことコラム

新年のあいさつ 「全ての子ども・若者を取り残さない道を」
〜子どもの精神的回復まで訪問支援者が関わり続ける仕組みの構築を〜

更新:2023年1月7日 寺出壽美子

 世界は昨年のウクライナ侵攻を契機に分断と激動の時代を迎えています。その中で、中国のウイグル族・ミャンマーのロヒンギャ族・イラクやトルコのクルド人、その他の少数民族の行く末が案じられます。
 子ども・若者に関しては、奇しくも年末に旧統一教会の家族の中で不適切な養育を受けている子どもたちがクローズアップされました。G7の中で若者の死因の1位が自殺なのは日本だけであり、ひきこもりやいじめを受けた者の多さ、生まれて来なければよかったと思う子ども・若者の多さは今日の日本の特色でもあります。
 私は2021年度、不適切な養育下で生活している子どもたちが不適切な環境や親子関係が回復されないまま放置されている状況を明らかにしたいと考えて、西郷泰之先生と2人で、東京都の全自治体を対象に養育支援訪問事業の育児・家事援助の実態をアンケートとインタビュー調査(『東京都における養育支援訪問事業の改善課題に関する調査研究』〜児童虐待からの回復に向けた支援の方向性に焦点をあてて〜)を実施して、昨年3月には主婦会館で報告会・シンポジウムを、12月には日本子ども虐待防止学会の学術集会(福岡開催)で調査報告しました。
 調査結果から、養育支援訪問事業の育児・家事援助については大多数の自治体が内容・期間・方法・対象のいずれも不十分であることが判明しました。また、ひとりか数名の訪問支援者が長期に関わり続けなければ子どもの精神的回復には至らないことも、インタビュー調査の結果、明らかになりました。
 しかしながら厚労省・東京都・各自治体の職員の中には、子どもが食事を摂取できた・保育園に通えたという部分だけに注目して目的は達成されたと判断してしまい、最重要目標である子どもの精神的回復が見過ごされたまま短期間で支援を終了している自治体が多いことが分かりました。不安定な精神状態のまま子ども時代を過ごすと、ギャンブル・薬物やひとに依存しないと生きて行けなくなり、しかも子ども時代の不適切な養育がその原因であるにも関わらず、本人は自分自身の性格が弱い所為で依存から抜け出せないのだと思い込んでいます。生きにくさを抱えた日本の若者の背景に子ども時代の不適切な親からの関りがあること、そしてその不適切な関りが解消されても、精神的な回復に至るまで丁寧な関りを誰からも受けずに放置されてきた結果、生き難さを抱えてしか生きて行けなくなっている現実を、当事者の若者は勿論、福祉の現場で支援する側の方々もその本質を誤認しやすいところに大きな問題が潜んでいると思っています。
 新年にあたり全ての子ども・若者を取り残さない道の構築を目指したいと思います。