子ども・若者支援に思うことコラム

‘21年度4月開始の調査研究の目指す意図・問題意識とは
〜温もりの中に子どもが居続けられること〜

更新:2021年5月20日 寺出壽美子

 養育支援訪問事業の対象となる子どもたちは、さまざまな広い意味での虐待状況の中で生活をして来ている子どもたちです。その子どもたちの回復に必要なことは何かという共通認識を獲得した上で、今後事業の策定が進められたらと考えています。
 多くの人は、精神的に安定した一生を送ることができたらいいと考えているでしょう。そのためには子どもは生まれたときから特定の自分を受けとめてくれる存在との関わりの中で、生きて行く最も大事な基盤を内部に少しずつ築いていくものだと思います。けれども、養育支援訪問事業の対象となっている子どもたちはその安心の礎となる信頼できる大人が不在であるために、安全・安心・安定を築くことが出来ないまま放置されているのです。
 確かに人は衣食住が不足すると生きていく根底を揺るがされます。けれども衣食住を誰かが補充してくれればそれで事足りるかというとそういうわけではなく、もっと根源的に大事なことは、その子ども自身が安心できる温もりの中に居続けられるかどうかだと思います。温もりで包んでくれる人のそばに居たいだけ居続けることが保障されれば、子どもは安心できて精神的に安定して行くことができます。

 私は、養育支援訪問事業担当職員が、単に寒さやひもじさから子どもを救えればそれでいいという理解から、子どもを精神的に放置していると子どもの内部に生きていく礎が築かれず、根なし草のような状態でしか一生を送ることができなくなる、即ちアルコールやギャンブル、人への嗜癖や依存症の中でしか生きて行けない道筋に追い詰めてしまうのだということの理解へと、そしてその状態から精神的に安定して生きて行ける道筋に舵を切るためには子ども時代に養育支援訪問事業の育児・家事支援で関わり続けることで、一生を不安定な精神状態でしか生きていけない人生から解放させることが可能になるのだという理解へと深化させていってほしいと願っています。
 そのためには、養育支援訪問事業の育児・家事支援を自治体によって実施していたり、いなかったり、短期間で終了していたりとのばらつきを是正すること、対象の訪問家庭は現在実施している家庭だけでなく、児童養護施設から家庭に帰って来た子どもや里親家庭の子ども等、対象の家庭を更に拡大して全ての温もりを必要とする子どもに対して十分な期間、訪問事業の継続を保障すること、そして自治体職員研修・受託団体訪問支援員研修を通して子どもへの理解をさらに深化させ、養育支援訪問事業内容の法改正に繋げて行けたらと願っています。
 この調査研究をきっかけとして、直ぐには効果が現れなくても、上述した道筋を描いて行くことができれば、そして、温もりで包み続けることが子どもの精神的安定に寄与するのだという考えが社会の中に少しずつでも浸透していってくれれば、子どもたちの未来は明るくなっていくと考えています。
 そして、この養育支援訪問事業こそが新しい社会的養育ビジョンにおける市区町村の子ども家庭支援体制の根幹となる事業であると確信しています。

[*「無条件の受けとめられ体験が不可欠」は芹沢俊介の思想です。『家族という意志』(岩新)参照]