子ども・若者支援に思うことコラム

心理的虐待(虐待の56.3%)から子どもを回復させるには
〜‘21年度4月開始の調査研究が目指す意図とは〜

更新:2021年4月26日 寺出壽美子

 2019年の児童虐待件数19万3千件の56.3%(10万9千件)は、心理的虐待です。ニュースで流される児童虐待事件や逼迫している児童虐待のケースは児童相談所が対応していますが、6割近く起きている心理的虐待は親子分離に至らないことの方が多いため、子ども家庭支援センターが対応しています。センターの養育支援訪問事業では保健師が訪問指導等を実施していますが、子どもは家庭の中で生活しているために心理的虐待状況が長く続くことが多くなります。その結果、成長してギャンブルやアルコール、ひとへの依存等、さまざまな生き難さを抱えて生きて行かざるを得なくなっているのが実情です。
 さらに養育支援訪問事業には、子どもの精神的な回復を目指して支援者が家庭に入り育児・家事支援等で子どもと関わる事業もあるのですが、この大事な支援の実施率は地域によってかなりばらつきがあり、ほとんど実施していない自治体もあるようです。心理的虐待を受けた子どもが精神的回復をするためには、子どもが信頼できる支援者に継続して関わってもらうことが必須です。その結果、徐々に安全・安心を獲得して精神的に安定していけるのです。回復していくためには予想以上に長い時間が掛かるのですが、長期間の関わりが必要であるという点についての社会の理解はまだ不十分であるために、この調査研究を通して支援者の関わりの重要性を明らかにしていければと考えています。
 ようやくこの念願がかない、この4月から1年をかけて日本財団の助成金で、


テーマ「東京都における養育支援訪問事業の改善課題に関する調査研究」
〜児童虐待からの回復に向けた支援の方向性に焦点を当てて〜

を、西郷泰之先生(全国社協中央福祉学院教授)と協同研究することになりました。調査では、東京都全自治体に対して支援者が訪問家庭で育児・家事・保育園送迎等を実施しているかどうかの実態を調査することで、現在の自治体の養育支援訪問事業が果たして心理的虐待を受けた子どもの回復への支援に適しているかどうかを検証して行きたいと思っています。
 来年3月に、報告書をホームページに掲載し、報告会・シンポジウムを開催する予定です。是非、ご関心を持ち続けて注視していただけたらと願っています。もうひとつ、お願いがあります。日本財団の助成金は、協会から自己資金として53万円拠出しなければなりません。どうか内容にご賛同いただけましたら、自己資金の一部としていくばくかで結構ですので、ご寄附・会費へのご協力を賜りたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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